「近鉄次世代アーバンライナーデザインスタディ3」に引きつづき、軸重の話です。連接台車を含んだ重量の表を、HTML+CSSで見栄えよく表現しようとたら、滅茶苦茶手こずってしまい、あきらめてExcelで体裁整えてからイラレにコピペで1枚ものの画像にしました。微妙に敗北感はありますが(笑)、昔ほど回線速度に気を使わなければいけない時代でもないし、制作の手間を考えたら全然楽チンで、さっさとこの手を使えばよかったです。
閑話休題。60000系「アーバンライナー・アドバンス」の最大軸重は、いくらぐらいになるのかを割り出すために、まず足がかりとするのは、実車である近鉄21020系「アーバンライナー・ネクスト」です。近鉄21020系のパーツごとの、おおよその重量を割り出すことからはじめます。とはいえ、「構体=○.○t」「電動台車=○.○t」「VVVFインバータ装置=○○○○kg」といった具合に、部品ごとの重量が網羅された資料が公開されていればいいのですが、そうもいきませんので、手に入る断片的な情報を元に、だいたいの数字を出していきます。
表1 近鉄21020系重量推計(単位 : t )
推理のとっかかりは、大阪寄りから4両目「サ21420形」の空車重量34tです。サ21420形は付随車かつ、床下機器はブレーキ関係を除いてほとんどないことから、構体+内装材+空調関係+ブレーキ関係+付随台車×2=34tとしてよいでしょう。
次に見るのは、両先頭車「ク21120形」「ク21120形」の空車重量41tです。ここから「サ21420形」の34tを引いた7tが、運転台周り+SIV関係+CP関係+BTの合計と見てよいでしょう。
同じ要領で、電動車である「モ21220形」「モ21320形」「モ21520形」の空車重量46tから 「サ21420形」の34tを引いた12tが、制御装置関係+モーター×4+パンタグラフということになります。
これらの数字を大枠にして、いくつかの資料から持ってきた、構体11t、電動台車7.5t、付随台車6.5t、抵抗器1tを整合が取れるよう行番号1~10に入れ込み、各車ごとに機器重量の合計(行番号11)が空車重量(行番号0)と一致するよう調節した結果が表1です。表中の項目の備考をつけくわえておきます。
1 | 構体 | ドンガラ部分。全車共通とする。 |
2 | 内装材他 | 座席、窓、内張り、天井、照明など。全車共通とする。 |
3 | 制御装置関係 | VVVFインバータ装置、フィルタリアクトル、断流器、パンタグラフなど。 |
4 | 抵抗器 | 抑速・発電ブレーキ用。 |
5 | SIV関係 | 補助電源装置、整流装置など。 |
6 | CP関係+BT | コンプレッサー一式、バッテリーなど。 |
7 | 運転台周り | 運転関係、ATS関係の機器など、先頭車に搭載する必要がある機器。 |
8 | その他機器 | ブレーキ関係、空気配管、電気配線、空調装置など。全車共通とする。 |
9 | 電動台車 | 各車2台。 |
10 | 付随台車 | 各車2台。 |
さて、ここからです。表1で出た数字を叩き台にして、60000系「アーバンライナー・アドバンス」の、まず車体を鋼製とした想定で重量を計算してみます。表2をご覧ください。
表2 60000系鋼製車体バージョン重量推計(単位 : t )
基本的には、表1の機器重量を、「近鉄次世代アーバンライナーデザインスタディ2.5」で艤装した設定に対応して、それぞれの車体に振りわけたものです。注意点がいくつかあります。まず構体(行番号1)と内装材(行番号2)については、単純に車体長(行番号0)の長さに応じて割り引いた値にしています(表1の値×(車体長÷20000))。なお、各車の車体長については、まだ暫定的なもので、詳しくは、もう少し先の記事で触れることにします。
制御装置関係(行番号3)については、パンタグラフとパンタからVVVFインバータ装置にかけての細々した機器を、抵抗器とともに、となりの車体(モ60300形・モ60500形・サ60600形)に持っていったので、重量もそちらへ1t足し引きしています。
小計(行番号9)は行番号1~8を足し合わせたもので台車以外の空車重量です。行番号10の合計は、小計+その車体の大阪寄りの台車の重量を足したもので(モ60800形のみ、名古屋寄りの台車の重量も足しあわせています)、以下の軸重の話とは直接関係のない数字です。
軸重の計算方法ですが、(1) 先頭の台車(第台車・第台車)と、(2) 先頭から2つ目の台車(第台車・第台車)、(3) 中間に入る台車(第~台車)では、軸重の出し方が異なります。
右図をご覧ください。表2の左下部分をトリミングして注釈を入れたものですが、(3) 中間に入る台車については図中の「第台車の軸重」の計算方法を見てもらえば、わかると思います。(1) と (2) は、それぞれ「第台車の軸重」と「第台車の軸重」の計算方法になります。「第台車の軸重」の「×0.6」と「第台車の軸重」の「×0.4」が「÷2」にならない理由ですが、先頭車体のオーバーハング分とSIV関係の床下機器を先頭台車寄りにシフトさせて艤装した分を、ざっくりと調整したためです。
それで、ようやく出た軸重(表2の行番号14)ですが、最大軸重は第台車の14.2tです。前回の単純計算で出した15.3tよりは幾分軽くなりましたが、まだまだ重いですね。近鉄21020系「アーバンライナー・ネクスト」の最大軸重11.5tとくらべると1.23倍の重さです。「軌道破壊は軸重の4乗に比例」に従えば、2.32倍も線路を破壊することになります。
このあとに、前回のコメントでネタバレしたアルミ化を持ってくる予定だったのですが、分量的に長くなったので、次回にまわします。
- 近鉄次世代アーバンライナー1(はじめに)
近鉄次世代アーバンライナー2- 近鉄次世代アーバンライナー2.5(編成構成・床下機器)
- 近鉄次世代アーバンライナー3(連接車のデメリット・軸重1)
- 近鉄次世代アーバンライナー5(軸重3)
- 実在の鉄道事業者様、関連企業様とは一切関係ございません。ただの妄想です。
- KINTETSU 21020 アーバンライナー・ネクスト(近畿日本鉄道公式カタログ)
- とれいん2009年1月号(第409号)
- Wikipedia「近鉄21020系電車」
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